David Gilmore + Rich Wright

About Face David Gilmour 〜 About Face(1984)

ブルースギタリストとして良いのかどうかわからんけど、ピンク・フロイドっていうバンドはプログレバンドの中でも最もテクニックに頼らないバンドなワケで、そこのギタリストだったデヴィッド・ギルモアは雰囲気を醸し出すには最高のギタリスト、という印象が強いのだが…。

 そんなギルモアさんのセカンドソロアルバム「About Face」、時代背景としては正にロジャー在籍のピンク・フロイド最終章「The Final Cut」リリース後の1984年に発表された作品。ゲスト陣も豪華で、バックにジェフ・ポーカロとピノ・パラディーノ。ピート・タウンジェンドも曲作りに参加というメンツで、ギルモアの歌作品という印象かな。この軽やかな爽やかさが彼の良いところで、ピンク・フロイドの暗い面を削ぎ落としたらこうなる、みたいな音なんだけど、それって正にロジャーが抜けた後のフロイドそのものだったりするワケで、故にこのアルバム「About Face」も同じ要素が強い。だから一般的には「鬱」の前身アルバムとも云われるけど、そこまで単純でもないだろうと。このアルバムはねぇ、結構リラックスした雰囲気があるんだよ。大体がバンドのギタリストのソロアルバムってのはリラックスした作品になることが多いはずで、友達集めて気楽にやれるってもんだしさ。だからこのアルバムもかなりリラックス感が漂ってる。

 中身の方は…、かなり秀作で、ひとりのソロアーティストとして成熟されたアルバムで、ギターの方はあまり重視されていないかな。もちろんいくつかの曲ではいつものように美しいブルースから泥臭いものが抜けた旋律と音を聴かせてくれます。ヘタするとAORにも聞こえてしまうくらい軽い音、かな。やっぱ基本的に曲を重視する人だからギタリスト的に目立つモンじゃないんだなぁ。

Wet Dream Richard Wright 〜 Wet Dream(1978)

「リチャード・ライト氏 死去」だけだったらどこか「?」って感じだったろう。「ピンク・フロイドの」があったからわかったが。やっぱり「リック・ライト」という呼び方が古くからのファンの親しみある呼び名じゃないか?まぁ、そういったニュースに本名で書かれるのは当たり前だが…。65歳で、ガンだったって?う〜ん、ライブ8のピンク・フロイド再結成が最後の勇姿だったか…。いや、ギルモアのツアーに参加したりしたのは知ってたけど、やっぱり残念。故に凄く久々にリック・ライトのソロアルバム「Wet Dream」を引っ張り出して聴いてみた。改めて、というかやっぱり久々に聴いた今も思う。

 「これ、フロイドじゃねぇか」と。

 まぁ、なんつうか、毒気のないピンク・フロイドなんだよね。ホワ〜ンとしたイメージの作風で、もちろんソロ作品だからピアノが良いアクセントで弾かれていたり、結構籠もって音を鳴らしたんだろうなぁという感じの作品になってて、全然疲れないアルバム。ちょっと暗い感じはもちろんあるけど、切羽詰まった悲愴感が突出しているもんでもないし、絶望でもない。アルバムリリースが1978年だから多分前年に録音されていると思うんだよね。そうするとピンク・フロイドでロジャー・ウォーターズが絶対権限を握ってしまった頃、もしかしたら既にクビを宣告されつつあったころだと思う。だから凄く生々しい音に聞こえてくるし、決して売れようとかアーティスティックにとかそういうんはなくって、そのままの姿。でもこれって…。

 「ピンク・フロイドの音だよなぁ…」と。

 サックスにはメル・コリンズが参加していて、これがまた強烈な音で音色を響かせてくれる。出しゃばりすぎないギターで程よく心地良く、更にアコースティックでも上手に弾きこなして仮想フロイドの手助けをしてくれているのがスノーウィー・ホワイト。今現在はスノーウィー・ホワイトはロジャー・ウォーターズと一緒に演奏しているし、1977年頃はと言えばピンク・フロイドのセカンドギタリストとして参加していた頃なのだ。後にシン・リジィに加入するという劇的なバンド遍歴を持つことになるが、ソロアルバム「Snowy White」でも聴かせてくれているように職人気質で綺麗な音を奏でる人なので、毒気のないこのアルバムにはピッタリ。ボーカルはリック・ライト自身がとっているが、巧いとかヘタっつう以前に音に溶け込んでいて全くよろしい感じなので問題なし。それでも「Pink Song」という意味深な曲ではその頃の心境を語っている歌詞のようだ。

 逝去のニュースを聞いて、何か形にしておこうと思ったもののどのアルバムがいいかな…とか色々思ったけどね。ソロアルバムはソロアルバムだけど彼自身からしたらやっぱりピンク・フロイドこそが自分の場所って思っていたのもあるだろうしさ。「原子心母」「おせっかい」などリック・ライトの鍵盤があってこそのアルバムだってあるし、「Live At Ponpei」という素晴らしい映像もある。それに「」というギルモアフロイドの作品だってある。強烈な個性を放つ二人を前にしているだけに目立たない鍵盤奏者ではあったが、その実ピンク・フロイドの音そのものを出していた人。

 昨年ソロアルバムを制作中というウワサが流れたがこれもまた誰かが完成させて世に送り出してくれるのだろうか。ギルモアさんならやってくれるだろう。

 「合掌」